年賀状でだけやり取りある友の「今年もヨロシク」それがうれしい
毎日新聞・毎日歌壇 2018/01/16
伊藤一彦氏選
https://mainichi.jp/articles/20180116/ddm/014/040/034000c
伊藤氏に初投稿した歌で、初めての特選をいただきました。うれしいです、ありがとうございます。
年賀状でだけやり取りある友の「今年もヨロシク」それがうれしい
毎日新聞・毎日歌壇 2018/01/16
伊藤一彦氏選
https://mainichi.jp/articles/20180116/ddm/014/040/034000c
伊藤氏に初投稿した歌で、初めての特選をいただきました。うれしいです、ありがとうございます。
「アマゾン」
その湿った地上の懐にすっぽり抱かれながら
太陽の位置を眺め、風向きを知るため手の中の草をばらまき
きっと私も貴方も、そんな風に指間に澄み渡る碧を祈るようにして生きていた
アマゾンの奥地で直立した時に捨てた能力を
何度も朝露が滑る木の幹を抱いて思い出そうとしていた
鳥の嘴を撫でながら泣いていたワニ
上流でヒヅメを浸しては今よりもっと愛し合っていたはずの私たち、生き物たち
いま私は、スタバのカウンターで熱々のコーヒーを受け取り
高らかなBGMと客たちの熱量を掻き分けながら、一マス空いた席に鞄を置きアダプターを差し込む
「お気に入り」をクリックして開く密かな旅
其処は限りなく近い熱帯雨林の
世界最大の広さを誇るAmazon.com
ネットストアの樹海に潜り「Hello」の文字を奥へ、奥へ
コーヒーを一、二口すすっているとやがて視界が明るむ、間違いなく此処もアマゾン
世界中の老若男女が行き交う巨大な四角い樹林で
それぞれのドアの向こうで、通貨で
ケルンの学生が暖炉の前で目を擦りながら
パースの老夫婦は夏の陽に照らされながら
週末、私の国では今年初の寒波が吹き荒れそうで
息を吹きかけても冴えない心のオレンジが
わっと濃くなるような音楽を、新書を探す
(貴方の言語や、好きな歌は何ですか?)
生い茂る文字を、画像を掻き分け
この密林を歩く私たちは何処に生息していても変わらない、また同じ植生の生き物なのだ
(2014.3「詩と思想」読者投稿欄)
(2019.2 詩集「秘境」収録)
♯詩と思想の投稿欄には、途中半年以上休んでいた時期もありましたが、その頃も含め卒業までトータル5年ほど投稿していました。いま振り返ると、詩と思想の投稿時代は大人になってもう一度味わうことの出来た、密かな(?)青春のような期間でした。
この「アマゾン」は投稿欄に掲載して頂いた作品の中でも素の自分らしさが出ているような気がして、また個人的に、この詩を書いた前後の頃をすっと思い出したり出来る、そんな作品です(ちょうどこの詩が掲載されて間もなく、引越したのもあり一層濃く覚えているのかも...もれなく徹夜で荷造りしたこととか、ついに朝の8時前トラックのバックオーライの合図が聞こえ、ひゃぁーと台所の小窓から下を覗いた思い出とか...笑)。今年はこれまでに書いた作品の中から随時、その季節に合った詩などもブログにアップしていけたらと思っています。
また新書ミニマリストの本を買う資本主義下の申し子たちよ
毎日新聞・毎日歌壇 2017/12/12
加藤治郎氏選
今回初めて二週続きで掲載して頂きました。ありがとうございます。
短歌を始めた頃に比べ、ふと何かしらを三十一音に嵌めていくことが少し身近な作業になりつつな今日この頃。短歌は日常の一部、とはっきり言えるくらいになったら人生素敵である。日常の一部に短歌がある、というのは実はかなり心豊かで、身体は寒さで震えてても、誰も見えない丹田のその奥までは冷え切らない、そんな状態に似ているのでは…?と思ってみたりする。理想郷とかではなく、今日居る地に足付け見るからこそ豊穣していく個の心、果ては人生と言うか、そんな力が短歌にはあるように思う。あくまで短歌を始めてまだ月日の浅い、私個人のいまの備忘録的見解としてφ(..)メモメモ